モミジと苔

ベランダで愉しむ作り方と育て方

街道をゆく3・スギゴケ

街道をゆく3 陸奥のみちほか』には

スギゴケとゼニゴケが登場しました。

 

「苔(コケ)」や「苔むす」という言葉は

これまでもときどき使われていましたが

特定のコケ植物名が書かれたのは

今回が初めてになります。

 

スギゴケとゼニゴケが登場するのは

「肥薩のみち 竜ケ城」の

薩摩蒲生(かも)郷の竜(りゅう)ケ城(じょう)

という小山の中腹に

梵字(ぼんじ)が彫られている

ビルほどの大きな岩の断崖を

見に行く途中の描写です。

 

先達が「腐葉土を踏みかためつつ

登ってゆくあとをかろうじてくっついてゆく」

司馬さんと須田さん(須田剋太画伯)。

 

「須田さんがあちこち指さしつつ名を

よんだ植物だけでも十五、六種類もあった。

カラスノキュウ、スギゴケ、ゼニゴケ、

竜の笹、山ミツバ。・・・・・・」

 

スギゴケは苔庭によく使われる苔で

やや日陰の湿った場所や

腐葉土のたまるようなところに群生し

山の急斜面の岩盤の多いところ

などにも見られるコケ植物です。

 

ゼニゴケも湿気の多い場所に生えます。

人家の周辺などでもよく見かけますが

園芸では嫌われものの苔ですね。

 

ちなみにカラスノキュウとは

ノボロギク(野襤縷菊)の方言

のようです。

 

そのほか「苔むす」が二か所でてきます。

 

まず「肥薩のみち 桃山の楼門」

熊本県の人吉にある願成寺という

寺の裏山の描写です。

「無数といっていいほどの五輪塔

青く苔むし、ところどころにツバキや

山桜の老樹が陽をさえぎり」

 

つぎに「河内みち 香華の山」

大阪府南河内郡にある高貴寺

本堂の裏の奥山にある磐船神社での

須田画伯の様子です。

「この神代さながらの磐船(いわふね)の

苔むす樹林であちこちしゃがみこんでは

香華を嗅いでまわっているのである。」

 

空海が感嘆して香華の山」とよんだとか。

ここで香華(こうげ)とは

「芳香を放つ下草」です。

 

街道をゆく4』へつづく(いずれ)

 

街道をゆく3 陸奥のみちほか』司馬遼太郎

街道をゆく 3 陸奥のみち、肥薩のみちほか (朝日文庫)

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