モミジと苔

ベランダで愉しむ作り方と育て方

街道をゆく24・苔むした

街道をゆく24』は近江と奈良です。

 

「苔むした」という言葉が

二回使われていました。

 

まずひとつめ。

 

「近江散歩 寝物語の里」より

「関所跡の敷地を南にはずれると、

むしたようにして

中山道の切れっぱしが残っており、

古道に面して、

無人のわらぶきの家が

朽ちたまま立っている。」

 

寝物語の里は

近江(滋賀県)と美濃(岐阜県

の国境(県境)にある集落。

 

現在の地名は

近江側が滋賀県米原市長久寺

美濃側は岐阜県関ケ原町です。

 

司馬さん一行は関ヶ原から

寝物語の里をめざしている途中

立ち寄った関所跡の描写です。

 

関所跡とは関ヶ原の関

古代史(壬申の乱)に登場する

不破関(ふわのせき)のこと。

 

 

そしてふたつめ。

 

「近江散歩 安土城跡と琵琶湖」より

「わずか標高一九九メートルの山ながら、

登るのが苦しかった。

麓からはことごとく赤ばんだ石段で、

むした石塁のあいだをさまざまに曲折し、

まわりの谷はみな密林だった。」

 

標高一九九メートルの山とは

琵琶湖東岸の安土山のこと。

 

司馬さんが中学生のころに

この山に登ったときの

最高所の天守台跡からの眺めは

「目の前いっぱいに湖がひろがっていた」

のだそうです。

 

しかしこのとき(1984年ごろ)には

すでに埋め立てられてしまっていて

「見わたすかぎり赤っぽい陸地」

になっていました。

 

 

最後はモミジ(カエデ)です。

 

「奈良散歩 歌・絵・多武峯」より

「石段の両側は、夏のだった。

そのあおあおとした華やぎを通して、

檜皮葺の屋根に春日造りの

朱塗の社殿の一部を見たとき、

記憶のなかの多武峯とさほどに

違わないことに安堵した。」

 

多武峰(とうのみね)は

奈良県桜井市南部にある山ですが

ここでは談山(たんざん)神社のこと。

 

談山神社は紅葉の名所だそうですが

司馬さんが訪れたのは夏。

 

モミジ・カエデといえば秋の紅葉ですが

春の芽ぶき、初夏の新録

そして夏の青葉もいいものですよ。

 

ちなみに

私はイロハモミジやヤマモミジなど

葉の切れ込みが深いモミジが好きなので

楓(かえで)はモミジと呼んでいます。

 

 

十五夜を過ぎて

明日から彼岸の入り

朝夕は涼しくなりました。

 

 

街道をゆく司馬遼太郎 24・近江散歩、奈良散歩

街道をゆく〈24〉近江・奈良散歩 (朝日文庫)

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