街道をゆく16・叡山苔
『街道をゆく16』は叡山(えいざん)。
今回は期待どおり
苔(コケ)とシダ(羊歯)、さらに
モミジ(カエデ)も登場します。
まずは苔(コケ)。
「石垣の町」より
比叡山のふもと
慈眼堂(じげんどう)を訪れた司馬さんが
「苔の上に饅頭笠をかぶって
堵列している石灯籠の列が美しかった。」
苔の地面と石畳と石燈籠が美しいですね。
コケの種類はスギゴケ(杉苔)でしょうか。
もうひとつ苔です。
「曼殊院門跡」より
曼殊院門跡(まんしゅいんもんぜき)は
京都の一乗寺竹ノ内に所在することから
竹の内御殿とも呼ばれます。
司馬さんがはじめて訪れたのは
「昭和二十四年の暑いころ」といいます。
「曼殊院の建物と庭を、
陽が落ちるまで、柱の一つずつから
屋根のこけらの苔にいたるまで
ゆっくり見せてもらった。」
司馬さんは
寺院というより公家の別荘といったもの
だと感じたと書いています。
暑い夏の午後に
屋根の苔までよく見ているとは
司馬さんも苔好きですね。
つぎは楓(カエデ)です。
「水景の庭」より
曼殊院の正門へ向かう坂道にて
「坂をのぼりきると、
土塁が築かれている。
塁上の楓(かえで)の葉が、
紅葉を待ちつつ青さに耐えている。」
土塁も苔で覆われているようです。
緑の苔とまだ青々としたカエデの葉も
苔の緑と紅葉したカエデの赤や橙の
コントラストもどちらもすばらしい。
紅葉の名勝としても有名ですね。
そしてシダ(羊歯)です。
「庭は、水景を表現している。
水を用いず、白い砂の海、
青い叡山苔の島々、
あるいは島に老いる松
といった配置のなかに、
やがて樹叢の暗い陸に入り、
陸の表現として滝石が組まれている。」
叡山苔(エイザンゴケ)とは
鞍馬苔(クラマゴケ)の別名です。
名前に苔(コケ)とついているとおり
コケ植物に似た姿をしていますが
実は小型のシダ植物です。
苔(コケ)というのは
コケ植物、地衣類あるいは小さなシダなど
地面や岩や木などの表面に張り付くように
生えているものをさす言葉なんですね。
おまけ。
「タクワンの歴史」には
草苔(そうたい)という言葉が
使われています。
あたたかな朝でした。