モミジと苔

ベランダで愉しむ作り方と育て方

街道をゆく13・枯れ苔

街道をゆく13』は壱岐対馬の道。

 

苔(コケ)とシダ(羊歯)が登場します。

 

まず苔ですが

「枯れ苔」という記述がありました。

 

曾良の墓」より

枯れ苔でおおわれた墓石の前に立つと、

曾良そのひとが

そこに居るようにも思われた。」

 

河合曾良(かわいそら)は江戸時代の俳人

松尾芭蕉の身辺を小まめにみていた門人で

奥の細道』の奥羽への旅に同行しました。

 

芭蕉の死後

曾良は幕府の巡見使の随員となり

九州を廻り壱岐島に上陸しましたが

壱岐の勝本で病没しました。

 

曾良の墓の写真を見ると

司馬さんが枯れ苔と表現したのは

墓石に付着している地衣類と

乾燥したコケ植物だと思います。

 

コケ植物の種類はわかりませんが

たしかにカラカラに乾いたコケ植物は

枯れたように見えるものもありますね。

 

でも雨が降って水に濡れれば

枯れたように見えた茶色の苔が

すぐにまた瑞々しい緑に回復します。

自然に生えているコケ植物は

丈夫なので簡単には枯れません。

 

司馬さん一行が訪れたのは

たまたまよく晴れた日が続いたあとで

苔が乾いていたのかもしれませんね。

 

司馬さんはそこにあった苔を

見たままに描写したのでしょう。

 

 

次は苔とシダです。

「山ぶどう」より

 

羊歯(しだ)も、石段の疲れを

こころよく癒してくれた。」

 

対馬にある海神(わだつみ)神社

を訪れた司馬さん一行が

長い石段をゆっくり降りてきたときに見た

苔とシダ(羊歯)です。

 

なんだか苔とシダを見ていると

癒されるような気がしていたのですが

国民的作家の司馬さんが書いているので

多くの人がそう感じるのでしょう。

 

 

もうひとつ苔です。

「赤い米」より

 

「芝生を踏んで奥へ入ると、

山への鄙びた石段があり、

むしていた。」

 

やはり対馬にある

天神多久頭魂(あめのたくづだま)神社。

この境内にある石段の描写です。

 

石段に苔やシダはよく似合いますね。

 

 

今日は彼岸の明け。

明日は十五夜中秋の名月です。

見られるといいですね。

 

街道をゆく13』司馬遼太郎 壱岐対馬の道

街道をゆく (13) (朝日文芸文庫 (し1-14))

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